
便秘の対策には食物繊維がいいことはよく知られていますが、実は食物繊維のパワーはそれだけじゃないのです。
ダイエットや美容そして健康のためにも毎日摂るべき栄養素なのです。そして最近の事例としてアレルギーにも効果があるということが分かりました!
そこで今回は、食物繊維がもたらす7つのすごい効果についてご説明します。
この記事の目次
食物繊維とは
食物繊維とは、「ヒトの消化酵素で消化されない食物成分」と定義されています。でも、食べ物なのに「消化されない」とはどういうことなのでしょうか?
実は食物繊維が胃で消化されないのは、食物繊維しかできない特別な役割があるからなのです。
食物繊維が便を出してくれる
食物繊維は、糸状、ハチの巣状、へちま状などの形をしていてどれも表面にたくさんの穴があり、ネバネバとした成分が付いています。
この穴とネバネバが優れたお掃除スキルとパワーを発揮するので「腸のお掃除係」と呼ばれています。
では、食べ物に含まれた食物繊維が体内でどのように働くのかをご説明しますね。
食べ物は口から肛門までの長い管(消化管)を24時間から72時間かけて通過していくのですが、食べ物の成分のうち食物繊維は胃で消化されないで、その形状を保ったまま進んで行きます。
食物繊維のたくさんの穴は、長い消化管内にある多量の消化液から水分をたくさん取り込んで、消化管内の食べ物を移動させます。
さらに食物繊維のネバネバ粘性が、腸のなかにある老廃物や食べかすをペタペタと貼り付けて集めます。
このようにして集めた老廃物や食べかすが便になりますが、水分を吸収した食物繊維が膨張して便を柔らかくしてくれますので、するっと楽に、しかもたくさん排便することができます。
逆に食物繊維が含まれていない食べ物を食べると、作られた便は水分を含まないので、コロコロと固い便になりますから、腸の中で詰まって、便秘になってしまうのです。
ですから、毎日すっきり快便生活をおくるためには、食物繊維を必ず摂るべきなのです。
食物繊維を含む食べ物は?
食物繊維を含む食べ物は、果物、野菜、穀類、豆類、キノコ類、イモ類、種子類、海藻類などの植物性食品です。動物性食品には食物繊維が含まれていません。
特に野菜と果物には食物繊維の他にもビタミン、ミネラル、タンパク質、アミノ酸、酵素、炭水化物、脂肪酸など豊富な栄養素が含まれていますので、それらの栄養を損なわないために、できるだけ生のままで食べるようにしましょう。
また食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、体に良い物質を生み出してくれて、それがダイエット効果や血糖値の上昇抑制などをもたらします。不溶性食物繊維は、便の量をましたり、腸を刺激して便通が良くなるように働いてくれます。
どの食品も水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含みますので、この区分けはあまり気にしなくても大丈夫です。下記に食物繊維を多く含む食べ物をリストアップしました。
果物類:リンゴ、ミカン、バナナ、レモン、キウイ、アボカド、干し柿、干しイチジク、ぶどう、なし、すいか、いちご
野菜類:ゴボウ、ニンジン、キャベツ、大根(切り干し大根)、レンコン、コンニャクイモ、オクラ、タケノコ、らっきょう、コーン、モロヘイヤ、青ピーマン、キャベツ、セロリ、トマト、はくさい、ほうれん草、きゅうり、パセリ
穀類:玄米、ライ麦、大麦、小麦(*穀類は精製されない状態)
豆類:大豆(納豆)、あずき、枝豆、いんげん豆、ひよこ豆、グリーンピース
キノコ類:えのき、なめこ、きくらげ、シイタケ(干しシイタケ)、マッシュルーム
イモ類:サツマイモ、ジャガイモ、かぼちゃ、こんにゃく、山芋、里芋
種子類:ごま、ぎんなん、くり(ゆで)
海藻類:わかめ、もずく、こんぶ、ひじき、のり、ところてん
便秘解消に必要な摂取量は?
そもそも慢性的な便秘になってしまったのは、日々の食事で圧倒的に食物繊維が不足していることが原因の一つです。
厚生労働省2015年の「食物繊維の摂取基準」は、18歳から49歳の男性で20グラム以上、女性で18グラム以上です。(たとえば、ゴボウなら2本、オクラなら40本相当)
慢性的な便秘の方はこれよりも多く食物繊維を摂るべきです。また、健康を維持する為には毎日30~40gの食物繊維を摂ることが望ましいと言われています。
しかし毎日30~40gというのは相当な量で、しかも毎日食べ続けることは難しそうです。
でも実は意外に簡単です。何故なら野菜と果物には食物繊維が必ず含まれていますから、毎日いろいろな野菜と果物をたっぷりと食べていれば摂取基準を十分にクリアーできるのです。
とにかく、1日の食事の7割以上を野菜と果物にしてください、そうすれば、1日に必要な食物繊維だけではなく1日に必要な栄養素のすべてを摂取することができます。
食物繊維を摂りすぎるとかえって便秘になる?
食物繊維は下剤とは違いますので、即効性はありませんし、便秘が解消されるまでにかかる日数には個人差があります。
慢性的に便秘だった場合は、体内に溜め込まれている便が多いですし、固くなっているので排出されるまでは時間がかかる場合があります。だから、”食物繊維を摂ったらかえって便秘になった”と思ってしまうのです。
また、下痢してしまう人もいて反応は様々です。
いずれにしても今までほとんど食物繊維を食べていなかったのにたくさん食べるようになったので、体が慣れるまで時間がかかりますから、あきらめずに食物繊維を摂り続けてください。必ず改善されていきます。
食物繊維7つの効果

「腸のお掃除係」と呼ばれている食物繊維は、その機能を最大に発揮して便秘を解消してくれるばかりでなく、私たちの体にとって嬉しい効果が他にもあります。
ダイエット効果
食物繊維は、体内にある老廃物、食べかすなど余分なものを便にして外に出してくれますから、体重が減ります。
胃の中で食物繊維は水分を吸収してスポンジ状にふくらみますから、空腹感が満たされて食べ過ぎを防ぐことができます。
また、噛みごたえのある食物繊維をしっかり噛んで食べることでも、満腹中枢を刺激するので、少ない量の食べ物でも満腹感を得やすくなります。
さらに、食物繊維を多く含む食べ物は主に果物、野菜、豆類、海藻類など低カロリー、低脂肪、低コレステロール、低糖質の植物性食品ですから、ダイエットにもいい食品を毎日食べることになるので、太りにくく痩せやすくなります。
コレステロールの低下作用
食物繊維の持つネバネバ性(粘性)は、老廃物だけではなく、腸管内にある胆汁酸やコレステロールの排泄を増やします。
腸管内での胆汁酸の排泄量が増加すると、今度は肝臓において、コレステロールを胆汁酸へ変換する作業が促進されるので、肝臓内のコレステロールも胆汁酸として体外に排出されていきます。
このようにして、食物繊維はコレステロール値を下げていくことができます。
血糖値の低下作用
食物繊維は、食後の血糖値とインスリンの分泌を低下させます。食物繊維の粘性が、小腸内のでんぷん消化を遅らせて、腸管のグルコース吸収を低下させるからなのです。
腸内環境を整える
腸の中にある糞便は有害物質ですので、体内からすみやかに排出されなければいけませんが、食物繊維は有害な便を外に出すために貢献してくれます。
食物繊維は、便の量を増やし、排便頻度も増やしてくれます。
大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を活発にさせて、排便をうながしてくれるので、毒素を含む糞便が腸内にとどまることを防いでくれます。
さらに、腸内で有害物質が作られないようにしてくれます。
また、食物繊維は、短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)を産生することができるので、腸内を酸性に保つことができ、酸性環境に強い善玉菌のビヒズス菌や乳酸菌の増殖を促すことができます。
この善玉菌が、悪玉菌(大腸菌やウェルシュ菌など)の産生を妨げることができるので、腸内環境を整えることができます。
したがって、軟便や下痢気味など腸の調子が悪い方にも食物繊維をたくさん摂ることで便の状態が改善されていきます。
病気の予防
食物繊維の多い食品は噛みごたえがあるので、よく噛むと唾液が良く出るようになり、食べ物の消化作業が促進されますから、栄養を効果的に体内に吸収して利用することができるので、健康になります。
食物繊維を摂ることが生活習慣病を予防することができます。特に、脂質異常症、肥満予防、糖尿病予防、動脈硬化、大腸ガンの予防のために、食物繊維を多く含んだ食べ物を積極的に食べることが推奨されています。
また、腸内環境が整うことにより免疫力が向上するので風邪などの病気を予防することができます。
デトックスによる美容効果
食物繊維によって腸内環境が整えられると、肌荒れの原因となっていた体内の毒素が出ていきますから、肌あれが解消されます。
肌の新陳代謝も促しますから、美肌になります。
アレルギー症状の緩和
私たちの腸内には免疫細胞の7割が集まっており、腸内環境が乱れると免疫細胞の働きが悪くなってアレルギー症状の悪化につながる可能性があるということが最近の研究で分かったそうです。
腸内環境を整えてくれるのは腸内細菌ですが、腸内細菌のエサとなるのが水溶性食物繊維です。つまり、腸内細菌が水溶性食物繊維を栄養源として体に良い物質を生み出すので腸内環境が良くなるのです。
NHK「あさイチ」(2018年7月25日放送)では、20年間もアレルギー性皮膚炎で悩んでいた女性のアレルギー症状が緩和されてきたという事例が紹介されていました。
この女性は乳酸菌を多く含んだ薬と水溶性食物繊維を摂取していくことによってアレルギー症状が改善したそうです。
まとめ
食物繊維は便秘対策だけでなく、ダイエットのため、美肌になるため、そして健康のために欠かせない栄養素だということがお分かりいただけたかと思います。でも食物繊維は摂りにくいものではなく、野菜と果物中心の食事をしていれば簡単に必要な量を摂れますので、今日も野菜と果物をたっぷりと食べていきましょう。
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参考図書:
川端輝江編著「しっかり学べる!栄養学」2012年、ナツメ社
牧野直子監修「栄養素図鑑」2016年、新星出版社
ハーヴィー・ダイヤモンド、マリリン・ダイヤモンド・著、松田麻美子・訳「フィット・フォー・ライフ」、2006年、グスコー出版